南伊豆の漁師であり、株式会社南崎漁師倶楽部の代表取締役である平山文敏さんです。

漁師として伊勢海老、アワビ、サザエ漁をされながら、さらに2年前に株式会社南崎漁師倶楽部を立ち上げて珍しい地魚の加工販売もされています。

 

 


―――漁師になられたきっかけを教えてください。

 

 

高校を卒業した当時、地元である南伊豆で父親が民宿を経営していたので、そこで“自分がアワビやサザエをとれば民宿の料理で出せる”と思いつきました。

 

 

祖父がかつて漁師をやっていたので、子供の頃から当たり前のように海で遊び、貝をとったりしていたので、漁に対しての抵抗感はなく自然な流れで始めることができました。

 

 

19歳から、父親と一緒に素潜りでアワビやサザエをとることからスタートして、民宿では料理を担当していました。

懐かしい話です・・・



漁と民宿の両立は、29歳頃の民宿を辞めるまで続けました。

 

 

 

 

―――伊勢海老漁を始めたきっかけはなんですか?

 

 


伊勢海老漁は24歳頃から始めました。

アワビ、サザエをとる素潜りの漁については、潜れる季節が4月下旬から10月の上旬ぐらいまでです。

 

 

 

一方で伊勢海老は9月15日~5月までが漁の期間で、両方合わせると1年間漁師としての収入が確保できるので、伊勢海老漁も始めることにしました。

 

 


始める1年ぐらい前から準備を始めて、網などの道具をそろえたり、先輩で漁をやられている方にお願いして一緒に漁に出て教えていただいたりしました。

 

 

 

南伊豆町は長い距離の複雑なリアス式海岸で囲まれているので、伊勢海老の漁獲量が県下トップで、漁師の多くが伊勢海老、アワビ、サザエ漁をやっています。

 

 

 

当時は、伊勢海老漁を20代でやっている人はいなかったですね。

今も少ないですが、若手の漁師も出てきています。

そのことに自分が影響しているか分かりませんが、昔よりはやりやすくなっていると思います。

 

 

 

 

 

 

―――地魚の販売はいつから始められたのですか?

 

 

伊勢海老漁を始めてからです。

伊勢海老と同じ網に地魚がとれるので、その魚を知り合いの飲食店、道の駅、ネット販売( 農家・漁師から直接食材を買えるオンライン“ポケットマルシェ” )で販売するようになりました。

 

 

 

夏の間は伊勢海老漁が休みなので、自分で釣ったり知り合いの漁師から仕入れて販売もしています。

 

 

 

ネット販売(ポケットマルシェ)では、キンメダイ、アカハタ、カサゴ、タカベ、ブダイ、イシガキダイ、マハタ、ホーキハタ、イシガキダイなどの地魚を津本式で加工して販売しています。
 

 

 

 

道の駅で売り始めたのは、店長から提案していただいたのがきっかけで、その時に協力してくれる若手に声をかけて一緒にやることになりました。
 

 

 

そして、魚をホテルなどの企業に卸す際に会社組織にする必要があったので、2年前に仲間と一緒に株式会社南崎漁師倶楽部を設立しました。

 

 

 

 

―――津本式(魚の鮮度を保つために開発された下処理方法)を取り入れた経緯を教えてください。

 

 

 

津本式は興味があって、Youtubeを見て知っていました。

でも事業に取り入れるならば本格的に学ぼうと、昨年の3月に思い切って津本さんに連絡して、直接教えていただくことにしました。

その時、「漁師で習いに来た人は初めて」と言われたので、珍しかったのだと思います。

 

 

 

地魚の脂ののりは季節によって変わるのですが、津本式で処理することで鮮度を保ち、磯臭さなどが消えて食べやすく美味しくなります!
 

 

 

ポケットマルシェ(農家・漁師から直接食材を買えるオンラインマルシェでは、津本式で下処理した新鮮な魚や、なかなか市場に出ない地魚をたくさんの方に食べていただき、喜んでもらいたいと思っています。
漁師でとってきた魚を津本式で下処理して売っている人は珍しいと思います。
 

 

 

―――平山さんからみた南伊豆の魅力はどんなところですか?

 

 

季節によってそれぞれの癒しが感じられて、開放感溢れる豊かな自然ですね。

自分は、海のそばで育ったので、この環境がとても好きです。

海は黒潮が通るので、その恩恵でたくさんの海産物にも恵まれています。

 

 

 

恵まれた自然や海産物、農産物、人も含めて南伊豆をこれからも大切にしていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

―――現在の課題はありますか?

 

 

㈱南崎漁師倶楽部を立ち上げて2年が経ちましたが、これを如何にして広げていくかということが課題ですね。

“地魚を加工して販売する”という良いビジネスモデルは作れてきているので、あとは安定した漁獲量、販売量アップ、認知度アップのための対策が必要だと思っています。

 

 

 

それには、仲間を増やすことや異業種の方々の意見を取り入れたりすることも考えていきたいです。

 

 

 

YouTubeの発信をしようと考えていて、漁の様子を撮影した素材は溜まっているのですが、その先の編集などに手が回らず溜まっている状況です。

過去には津本式で魚をさばくインスタライブもやりましたが、やり続けることができていないのが悩ましいところです。

 

 

 

今後は、天候やコロナなど不測の事態にも耐え、安定した収入を得られるように、漁のポイントを広げるなど漁師としてもステップアップしていきたいと思います。

 

 

 

感想

 

インタビューでは平山さんの漁師という仕事に対する熱意、南伊豆という地元への愛をひしひしと感じました。

 

 


ネット販売(ポケットマルシェ)のページを見ると、お客様が届いたお魚を、お刺身や唐揚げ、煮魚お吸い物などにした写真がたくさん投稿されていて、「びっくりするぐらい美味しい」「普段買えないお魚だったのでうれしい」「丁寧な処理をされていた」「またリピートします」というコメントが書かれていました。
そこからも平山さんの誠実で丁寧な仕事ぶりがうかがえます。

 

 

 

19歳という若さで年配者ばかりの漁師という世界に飛び込み、会社を作って地魚を販売したり、台風の被害を受けた際にはクラウドファンディングで資金を集めるなど、新たな道を切り拓かれている平山さんは、今後も南伊豆の漁業をけん引される方なのだろうと感じました。

 

 

 

小中学校の時には生徒会の会長や副会長を務められたとお聞きして、納得でした!
これからも平山さんのご活躍を応援しています!!